6月 30 2015
親族後見人による不正への対策 ②後見制度支援信託
後見監督人を付ける方法と並んで,親族後見人による不正防止策として行われているのが「後見制度支援信託」です。
後見制度支援信託とは,被後見人の財産のうち,日常生活に必要な金額以外の金銭を信託銀行に信託してしまうというものです。
信託銀行に預けてあるお金を使う必要ができた場合には,家庭裁判所に申し出て指示書を発行してもらい,その指示書を使ってお金を入手することになります。
この制度は法律上に根拠があるわけではありませんが,平成24年2月に開始され,新規案件だけではなく,既に後見が開始している案件についても利用が進んでいるそうです。
名古屋家庭裁判所では,預貯金総額が1200万円以上あり,親族を後見人とする案件では,原則として,後見監督人あるいは後見制度支援信託を利用する運用となっているようです。
専門職の後見監督人を付けると監督人報酬がかかりますが,信託銀行に信託する場合には,信託報酬がかかるものの,監督人報酬に比べれば安いという事情があるそうです。
しかし,後見制度支援信託を利用する場合,既存の預貯金については解約ないし大幅な引き出しをすることになりますので,そうした点に抵抗感を感じる方もあると思います。
なお,後見制度支援信託を利用する場合,信託完了までは専門職が後見人をつとめ,信託完了後は親族が後見人に就任する(専門職後見人は辞任する)「リレー方式」,あるいは,親族後見人と専門職後見人がそれぞれ権限を分担して後見業務をおこなっていく「複数方式」とがあるとのことです。