6月 24 2015
親族後見人による不正への対策 ①後見監督人を付ける
先日,成年後見に関する研修に出席してきました。
その研修で聞いてきた最近の成年後見に関する情勢について触れたいと思います。
近年,成年後見人による被後見人(認知症等により成年後見を開始した人)の財産を横領する事件が多発しており,1年間の被害額が数十億円にものぼっています。
弁護士・司法書士等の専門家後見人による横領事案もありますが,被害額や被害件数では親族後見人によるものがほとんどのようです。
裁判所もこうした事態へ対策を打ち出していまして,①弁護士・司法書士等の専門家を後見監督人に付ける,②後見制度支援信託を使う,という2つの方法が行われています。
まず,①についてご説明します。
後見監督人というのは,民法上に定められている制度で,かんたんに言えば読んで字のごとく後見人を監督する人のことです。
後見人に対しては家庭裁判所が監督しているともいえるのですが,裁判所の体制上,十分な監督がなされているとは言いがたい状態にあります。
そこで,弁護士等を後見監督人として付けて,後見人が定期的に後見監督人に財産状況等について報告するようにすることで,被後見人の財産が侵害されるのを防ごうというものです。
ただし,弁護士等を後見監督人として付ける場合には報酬が必要になります。
報酬の額については裁判所が決めるのですが,以前もご紹介した「名古屋市成年後見活用ハンドブック」によると,被後見人の財産額が5000万円未満の場合には,月額1万円~1万5000円,財産額が5000万円以上の場合には,月額2万円というのが目安のようです。
現在,名古屋家庭裁判所では,新規に成年後見を開始させる案件では,預貯金総額1200万円以上の場合,後見監督人あるいは後見制度支援信託の利用を検討する運用になっているようです。
また,すでに成年後見を開始している案件についても,適宜,後見監督人あるいは後見制度支援信託の利用を検討する運用のようです。
従来のように,特に親族に紛争のない案件では,申立書に記載したとおりの親族後見人が選任され,後見監督人等は付かない,というわけにはいかなくなってきているということですね。
長文になってきましたので,後見制度支援信託については次回に触れたいと思います。