6月 22 2013
宇奈月温泉事件
宇奈月温泉事件というのは民法を学習すると初めのころに出てくる有名な事件です。
「権利の濫用」という言葉が初めて大審院(現在の最高裁に相当する戦前の裁判所)の判決文中で使用された判決として習います。
事件の概要は以下のとおり。
富山県黒部市(当時は下新川郡内山村)の宇奈月温泉で温泉事業を経営していたY社は,黒薙川上流から宇奈月まで約7.5キロメートルにわたる引湯木管を敷設して温泉を引いた。
このとき甲地(約370平方メートル)の一部(わずか6平方メートル余り)について,土地所有権者と土地利用権について契約がない状態であった。
このことを知ったXは,甲地と隣接の乙地(急傾斜で利用しにくい土地)を買い取り,Y社に対して,引湯管の無断通過は所有権侵害であると言ってその撤去を要求し,それができないなら甲地・乙地併せて約9900平方メートルを地価の数十倍の価格で買えと強要した。
Y社がこれを承認しなかったので,Bは土地所有権に基づき木管の撤去等を請求して訴訟を起こした(一部事実を簡略化)。
1審と2審は請求を棄却。
大審院は,昭和10年10月5日,「権利ノ濫用」という文言を判決文中で初めて用い,Xの請求(所有権の行使)は権利の濫用にあたるため認められないとして請求を棄却しました。
利用価値の無い甲地はXにとってなんら利益をもたらさないのに対し,請求を認めて引湯管を撤去すれば,宇奈月温泉と住民に致命的な損害を与えることになります。
このような結果をもたらす所有権の行使に基づく請求は所有権の目的に反するものであり,権利の濫用であって権利行使が認められないとしました。
まあ,昔から強欲な人はいるということですね。
この判決以後「権利の濫用」という概念が徐々に定着していき,昭和22年の改正で民法1条3項に「権利ノ濫用ハ之ヲ許サズ」という風に明文化されました。
ちなみに,名古屋市政資料館に宇奈月温泉事件の判決書が展示されています。
私は「こんなところにあるんだ」と見たときに感動したのですが,まわりの一般の観光客の方は素通りしておりました(^^)
















